自由が丘公園

野分 紅

あんたにさらし続けてきたものを

あたしは見ることができないってことに

昨日気がついた

それってなんだか

納得がいかない

十月十日前にはあんたをコロすために

きゅうきゅうと閉じ込めてった場所から

なんにも知らないくせに

なんにも知らないものが

生まれてくるの

それってなんだか

納得がいかない

やはり

手のひらでしか

コロせないものかしら

それで

「自由が丘公園」という題名の

ポエムを書き始めたのだけれど

なぜだか

もうあんたにさらすことはできない

あたしの手のひらは

裂けて濡れているけれど

どこにも入る余地がないでしょう

昨夜、はち切れそうな腹をかばいながら

自由が丘公園のケヤキの下あたりに

埋めるための穴を掘ったのに

何にもコロせないまま

あたしの納得が森で行方不明してしまった

そのうち

あんたの手首や胸の切り傷が

痒みを帯びて盛り上がる頃

あたしのポエムに

トウメイの空白がいくつもできて

そのうち

「生まれてくるもののために笑わ

なければならない」って

絶望という言葉を捨てるの

そのうち

幸福微粒子を発散するようになる

べきものとして

ゐ　　いくの

そのうち

（春になる頃）

淡い色の若葉や光に満ちあふれる

自由が丘公園で

彼または彼女は歩きはじめるの

風や水が鳴り響くの

あんたの

見えない場所をさがして

あたしたちは

ブランコに乗り

象の滑り台を滑り

お砂のケエキを作るの

脅迫を放棄した脅迫文が

打ち込まれていく

眩しさや笑顔の中で

あたしたちが終わってゆくのを

あたしだけに見えるようにして

打ち込んでゆくんだ

あんたは探しに来てくれるかしら

自由が丘公園まで

あんたは見つけられるかしら

もうずっと

あんたを鬼にしたまま

見つかりたいと

潜んだまま

うっとりと

さらけだす決意

だけはして

埋もれて

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