「だいじょうぶですか?」

詩を書く歯医者さん
高岡力に聞く
詩作にかかわる
10のQUESTIONS


さてさて、大変遅くなりましたが、ベストぺんてか恒例Q&Aをご紹介します。
屈折した用心深い機関銃という印象の高岡さんに、ストレートなところ、聞いてみました。
ストレートにお答えいただき安心感(安定感ではないです)を持ちました。聞いてみてよかった。 higuchi

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Q1.高岡さんの投稿作品を読んでいると、「大丈夫だろうか」と心配に
    なることが多々ありました。

    「大丈夫ですか」?
  
    なんのことかとは聞かないでください。

高岡:踏み止まっております(つもり、です)。


Q2.5、6年前にパソコンを買ってから詩を書き始めたのですよね。

     それはどうして?


高岡:厳密に言えば、再開です。
    十代に友人の影響で詩を書いていました。
    進級(大学)するにつれ、詩への欲求が衰退し、遠のきました。

    卒業後、職にもなれ、結婚し、物(マックがモノとして美しかったので)
    としてのパソコンに興味を抱き、インターネットにつなぐと
    早速エロサイトを巡り、まじかよ、うひゃーーモロだよ
    と歓喜驚愕の日々を過ごしておりました
    
    が、ふと「詩」と検索してみた所、出て来るわ出て来るわ、
    「こんなんでいいのかよ、詩?」
    と思い上がりも甚だしく、うっー久々に書いてみっか
    と投稿するに至った次第でございます。
    十代に刷り込まれた脳内歓喜がパソコンと言うおもちゃ
    により発掘された・・・・・    
    故に僕は夜、パソコンに向かう時、皮ジャンを羽織ります。

さらに
高岡:職業がら昼は良い人。優しい先生。よく説明してくれるし、治療も丁寧。
     なんて言う偽りの仮面を被るので、溜まります。

     患者さんの痛みと言う切実な表現を無条件で受け止め
     自己を殺し献身すると言う仮面は僕には重いです。
     生き甲斐を治療に感じられる真っ当な天職者ならば
     仮面など必要ないのでしょうが。

     夜、無条件で切実な自己主張(自己表現には程遠いモノまで)
     を受け止めてくれるネット詩の投稿欄に
     自己の裸顔を垂れ流し太陽と月のバランスをとっていたのです。
     無条件で受け止めてくれないこの「ペンてか」は僕には異質でありました。

    


Q3.高岡さんは家族のことをよく書かれますね。
    そのこだわる理由を教えてください。一番身近な素材だからというような
    答えだと困ります。

    そうね。「何を」、詩で、書いていきたいのでしょうか。


高岡:「関係」を。
    
    嫌がおうにも誰でもが囲われている「家族」と言う「関係」に
        興味を持ちました。

    僕自信 結婚し、血の繋がらない女性と共に過ごし
    やがて血を半分ずつ受け継いだ子が関係の中に立っている
    と言う現実に、他人事の様に違和感を抱いたからです。

    夜中隣で寝息をたてている女は、昨日も僕の隣に居たけれど
    誰だろう?まして、ついこの前までこの世に存在していなかった
    小さい口は「パパ」と僕に笑いかけるけれど、君はいったい誰?

    そして何よりも、明日も女の隣で寝息をたて、「パパ」としがみつかれる
    お前こそ、いったい誰?関係を囲う「部屋」それを囲う「家」の中で
    そう問うている自分はやはり大丈夫では無いのかも知れない。




Q4.Q3.とも関連するのですが、詩を書いていて、めざすところは、どんな
    ところでしょう。理想なり夢なり地位なり、教えてください。

     ぺんてかに投稿することは、その目的に沿っているわけなのでしょうか?


高岡:理想・夢:死ぬまでに一冊だけ詩集を作りたい。

     父としての僕を子が回想する手懸かりの一つとして。
     二冊はいらない。
     それと、十代の時、僕の詩を誉めて下さった方に
     僕は不義理をした。その方、石関氏に恩返しする
     意味でも一冊だけ詩集を。

     地位:無名の歯医者、ただそれだけ。
    
     「ペンてか」を主催している樋口さんが僕には潔癖に思えたから。
     潔癖な思考を通り抜ける事が出来た詩をたった一冊だけの詩集に
     収められたら嬉しいと思って。
     なので、沿っている訳です。




Q5.詩を書いていて「しあわせ」という顔をしている男性を私は知らないのですが、
    それについては、いかがお考えですか。

高岡:僕も「しあわせ」そうな顔をしていないと思います。男女を問わず、社会人と
     して生きながら、かつ詩を書くと言う行為は「疾病」なのでは・・・と思います。
     詩に限らず、何か表現しないではいられない人は「きりが無い」から困り者です。



   <しあわせになりたいと、思いますか?>

高岡:「しあわせ」になりたい、と言うよりも
     家族に「しあわせ」をより多く感じさせたい
     とは思います。


   <というか、しあわせって、何でしょう。>

高岡:分かりません(人それぞれ)
     ただ、一瞬感じる情動だと思います。
     持続する代物ではないでしょう・・・・



Q6.いじめているみたいなので、質問を変えます。実際、ちょっといじめて変化も
    させてみてみたい高岡さんなわけですが。

 
   詩の魅力は、何ですか。

高岡:「これは詩です」と言い切ってしまえば
     それが「詩」になってしまうこと。



Q7.では、詩の毒は、何でしょう。

高岡:己の安息を破られる数行。
     どなたでも自己の保身が第一義でしょう
     その保身を危うくさせられる不快感。
     でも、気になってもう一度舐めてしまう暗い数行。



Q8.あなたを毒する詩を、教えてください。できれば数フレーズ紹介下さい。

高岡:もう耐性は出来たのですが、以前はかなり毒でした。

    豊原清明さんの第二詩集「朝と昼のてんまつ」に
    収められている「ゼツボウの雲」と言う詩の数行です。


      死。
      死というものを
      まぢかに見たことのない
      僕は
      扇風機の中に
      ソーセージを入れて
      切断した
      なんかうまそうで 
      おいしい。


    これを読んで、本物(色んな意味で)には勝てない
    と思った記憶があります。




Q9.あなたを幸せにする詩を、同じく、教えてください。

高岡:アメリカの詩人、サンドバーグの「シカゴ」と言う詩です。
    黒沢明の映画みたいだと思った記憶があります。



Q10.最後の質問は、自分で作って答えてください。
    今、自分に一番聞かれたいことと、聞かれたくないことについて、それぞれ。


高岡:今、一番聞かれたいことは、
     「お子さん、かわいいでしょう?」

     かわいいです。とても。とても。
     里帰りして、ひとりぼっちで、取り残されると
     僕は、きまって泣いています。
     鬱陶しいのに。
     やっと解放されたのに。
     吊るされた靴下見て、小せーなー
     その隣の妻のパンツにレースなんかが付いていて
     その隣の俺のパンツの大きい事。
     なんで俺を独りにするんだよー
     と、きまって僕は泣いています。


     今、一番聞かれたくないことは、
     「このままでいいんですか?」

     無言(言葉がありません)。





おまけのQ

地元のおみやげでおすすめをひとつご紹介ください。よいところ(伊豆長岡)に
お住まいだなと思ってしまっているので。


高岡:黒柳と言うお店の「温泉まんじゅう」です。
      窓からは富士山、近くには温泉街。
      よい所なんだと思います。






ありがとうございました。サンドバーグの「シカゴ」、私も印象がありました。「世界のための豚屠殺者、…」本棚から探し出して、ひとり攻撃的に朗読してみると、すっきり^^ 

仮面、わかります。けれど、長く詩を続けていくと、仮面と内面と詩が平面でなく融合して膨れるときがくると思います。それができる人は素晴らしい作品を残すなぁと私は感じています。

ぺんてかは投稿作品を「無条件で」受け止めてますよ、裏では…。プリントアウトしてお風呂に持って入って寝る前に読んで文句つけて「何を書いてるんだ」とか愉しんで… 私の詩なんてこんなに身近においてもらえてないでしょう・・・ ただ、載せないのは載せないだけです。

投稿時代が終わってしまうと張り合いがなくなってしまう人もいるようですが、他人の天秤がなくても「これでどうだ!文句言わせん」ぐらいな強気の作品を、今後、期待しています。詩集は、お金をかければ誰でもどのようにも出せます。「1冊」となると、高岡さんはもっと書いてください。言われなくても書きそうだけどネ!()

↓高岡 力の作品群↓ヒグチのMYベスト3は「椅子」「インパルス」「共振」かな。「ハミング」も

2006.4掲載「

2006.3掲載「インパルス」/2006.2掲載「」/2006.1掲載「売買」/2005.11掲載「モノローグの道」/2005.9掲載「デイジーの憂鬱」/2005.7掲載「」/2005.6掲載「ある。」/2005.5掲載「ハミング

2005.3掲載「セルフ・ポートレイト」/2004.11掲載「ハル」/2004.10掲載「椅子」/ 2004.9掲載「ねーさん、と」/ 2004.8掲載「壁とおくさん」/2004.7掲載「竹と絵の先生」/2004.5掲載「影の旗

2004.3掲載「部屋」/2004.2掲載「動物屋」/2004.1掲載「厚ぼったい夜の空を」/2003.11掲載「共振

2001.5掲載 T.Tの詩「飛ぶカズコ


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