お断り

衣服を着ているが衣服を捨てたいときがある。

路上で、うだうだと恨みつらみを

大声でがなりたてて

演説する人ふうになりきってみたい

目はうつろに、小魚のように

夢遊の病者となって。

逆立ちをして、ジャグラーなんぞも

道行く人と、かけあい漫才も

野次もほしい

棒で殴られてもいい

そうだ、唄も歌いたい。

拍手も少々。

犬になりたい

石ころでもいい。

桜がはらり

雪がちらり

灯火は疲れて消えかかり

日本の風雪に

喜び、泣いて

おいおいと。

海に入る人の決意で

白いブリーフひとつで。

ばしゃばしゃと

水たまりの道を長靴はいて

夕空の雲を、ひと息で吹き飛ばし。

それから、縁側に足を組んでもよい。

茶をすすってもよい

黙って、永遠に黙って

禅僧のようになってもよい。

なにになってもいいが

なににもならなくてもいい。

死んだマネをしている人が

そこいらじゅうにいてるが

そのそこいらじゅうの人でもいい。

ああ、みんなそうでしょ。

ああ、みんなそうだよ。

「詩人お断り」

とその玄関には書いてある。