今月のピッカイチ☆
精神的ロケッティズム
シル
ぬるい雨が降ってる日 私の背中のへこみに伝う モロッコの野菜スープ 火傷をした体から 私の音は洩れていない 新宿の東口 亡き祖父が設計した書店に逃げ込む 青い顔の店主 本の読み過ぎで目から血が出ている 私はスカートで首を絞めて止血してやる 人は馬鹿だから 死ぬと全てを忘れる 本以外の人類の話は どこにいけば聞けるのだろう 声は音速で地球から遠ざかる だから超音速で声を追いかける ビックカメラ中の冷却装置を壊して 加熱しきった環状サイクル 山の手線で地球を脱出する 星の格子が丸みを帯びて歪み 幾何学模様の光の中はこそこそと 囁き声が空間に満ちてくる クロマニョン人の気取って鼻に抜けた声 コーラのサービス缶ぐらいの脳味噌で ネアンデルタール人が雄叫ぶ 肺胞一杯に流れ込む 有機物の秘密が 星の骨片で私を撲ち続け 破壊された車両では 色っぽく全身内出血の 私の骸が目を開き 女性週刊誌の吊り広告が 宇宙の果てに漂っている。