冬の夕焼け 　　　　　島田奈都子（毬藻）

シフトが大幅に減った

その午後

安い駅前珈琲をはしごしては

これからのことを考えた

「手って年齢を物語るよね」

わたしくらいの年零の女が

ふたり

顔を見合わせながら溜息をつく

観葉植物の鉢を境に

わたしもじぶんの手を眺めた

そう言えば光沢に乏しくなり

少し引き締まったきがする

「何もしてない手だね」

いつかそう言われて

自分を蔑んだけれど

あれは若かったのだ

わたしは無料バイト情報誌を

捲っている

もう印をつけすぎて

何がなんだかわからなくなる

鈴の音色と

ホワイトクリスマス

季節感が初めて

せなかにずっしりと重い

誰かが出入りするたび

わたしの席まで風が届く

１００えんショップで帰りに

小さなサンタの人形を買おう

冬の夕焼けが

しずかに火照る

ひからびた手の甲に

かすかな火の温かみが

しみてゆく