ア？ジ？ア？の女は悲しい？ 樋口えみこ
堕ろした子どもをポンカンにして ひとつはポンカン！食べちゃって もひとつポンカン！殴って捨てて 最後のひとつはさらしで縫った袋につめて いっしょにお風呂に入りました ポンカン〜と浮かんだ ちいさな頭 てるてる坊主 このなかに私のいぢわるが入ってる しあわせがニクイ ふしあわせがニクイ ないものねだりの地獄釜 あたしぁそんな人間じゃぁないのよポンカン 膝小僧がゴワゴワポンカンー とんと昔あったとさ くらいくらい押し入れの中にはどこかにある星空もまた 眠ってたポン 胸がハクハクいつかどこかにカンポンカン だけどだめになったわけじゃない 子どもを堕ろしても首を絞めても絞められたって だけどだめになったわけじゃないポン おいしいよ茶碗蒸し 愛しているともう言えない だけどだめになったわけじゃないポン レッサーパンダが笑ってる 明日のことがわかってる だけどだめになったわけじゃないポンポン ヒメスジコガネがカタツムリなんのこっちゃ だけどだめになったわけじゃないパーティー すれ違う人がのどをかき切る 鋭い刃物のエクスタシー だけどだめになったわけじゃない 軽蔑してても私は笑う フェネックギツネも笑ってる だけどだめになったわけじゃない 見知らぬ駅の待合室の エスカレーターから下りてくる人は誰 いつでも黒いシルエット 距離をおいて下りてくる 駅の前には何もない 次の列車はなかなか来ない 食堂は何年も前に閉鎖したまま ここはどこ 距離をおいて下りてくるポン 誰か笑って 寒い、寒い、寒い あんたが私を売ったのよ 食堂ののれんはズタズタで 壊れた椅子がガラス窓から見えている 投げ出した手足みたいにダーリン お話、じょうず 肩まで百数えて バスタブからチョコレートを 頭蓋骨からダイナマイトを ポンカンからチュパチャプスを あたたまるのよ さらさらそーじゅ ピレット、パレッタ、プラット 意味はない だけど
だめになったわけじゃない おいでポンカン、やさしく やさしくやさしく殺してあげる 私は後悔しない 私は悟らない 神さま ただ、言ってみるだけ 意味はない 膝小僧がゴワゴワでポンカンでこすると皮膚が破れて 朱いお湯が私を染めておもしろくてこわくって体がかゆくて涙が出 て 膝の肉の中から貝殻のようなシッポがでてきて、それひっぱって 透きとおりそうにキレイなの、それひっぱって 気を失いそう だけど私はやめられない 巻き取りコードみたいに戻せないから ひきずって歩く すっかりのぼせたポンカンを ギャラギャラ鳴るへびのシッポにくくりつけて お風呂からあがると 私はすっかり一肌むけて 薄皮一枚、臓物の積み木人間です 膝からシッポが出てるから歩くたびにカックンしちゃって 傷だらけのポンカンも 何かを信じて血を流してる それは何と、人は言うけど 青空星人 私、悲しくない
詩集「なにか理由がなければ立っていられないのはなぜなんだろう」より
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