| 忘れてゆくほどに烈しくなる |
| 山本しのぶ |
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| その七階の窓は |
| 真っ白に塗り潰されていたよ |
| 雪が |
| 雪が |
| 雪が |
| 願い通りに降ったから |
| 高い高い窓から |
| 地上を見下ろすと |
| ススキノのタクシーの赤が |
| アリンコみたいに |
| 長く続いていたよ |
| あそこは |
| いったい |
| どこなんだろう |
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| ちいさな人たちが |
| 飲んだくれて流れていったよ |
| 雪で真っ白の地面の上を |
| 誰かの心臓の音がする |
| 真っ赤な夜の上を |
| こんな真夜中の |
| 凍えた孤独の上を |
| たった独りで |
| 時には |
| 誰かと寄り添いながら |
| そうしてどこに流れ着いたのか |
| 今ではわからない |
| あそこは |
| いったい |
| どこなんだろう |
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| 七階の窓の中を |
| あたしはもう忘れてしまった |
| パフという名の生演奏の店 |
| 変らない事が誇りだった人たち |
| ススキノでビルを見上げても |
| 今ではどこにも存在しない |
| 十九のあたしはどこを探しても |
| もういないように |
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| あたしも |
| 流れていってしまったよ |
| 真っ赤な夜の上を |
| ちいさな孤独の上を |
| たった独りで |
| 時には |
| 誰かと寄り添いながら |
| 暗幕を開いたら今も吹雪がうねる |
| あの窓を高く高く見上げながら |
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| 遠くで |
| バンジョーの音がしていたよ |
| どこかで |
| セロファンの照明が回ったよ |
| そうして今どこに流れ着いたのか |
| 誰に伝えればいいのだろう |
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| 忘れてゆくほどに烈しくなる |
| あの窓の外の吹雪のことを |
| 誰に伝えればいいのだろう |