5月ブンのピカイチ。
キャット・ファイト・ショウ 大矢真珠
こんな田舎町。
旅も３ヶ月も続けば日常になる。 朝、何度か尻を拭き、 夜、何度かマスカラを塗る。
中央には四角い「ステージ」。 昨日ここに着いた時には何もなかった。 コンクリートに椅子を並べ、 夜にはもう、男達の気色ばった歓声と罵声。 家で女を殴るだけじゃ物足りなくて。
ステージが始まる前、 痩せた男がそっとのぞきに来た。 今、あの列の右に座ってる。 女の汗で汚れた髪がお気に入りらしい。 夢見るような目をしている。
けれど、足を広げて技をかける時、 私も夢を見ているのを知っているか？ 興行が終れば、身体はだるく重いが、 仕上げに塗る香油のように 甘い香りの夢を見ている。 私の腿だけが知る夢だ。
こんな田舎町、 明日になれば、また東へ向かう。