猫橇 　　　りっと

猫橇走る

アレグレットのスピードで

君が手順を間違えて

ズボンを脱いで歯を磨いたら

ハミガキ粉の匂いを頼りに

獰猛な犬が這いずり回る

猫橇走る

犬に変わった僕の身体を

六法全書が降る毎日

君のズボンの破けた一部に

行列はいつまでも続いて

頭髪だけで夜が暗い

猫橇走る

行列を裂く風の強さで

恥ずかしいときの足の振動

誇らしいときの足の振動

音にならない空気の震えを

喉の奥まで蓄えながら

猫橇走る

乾いた言葉に守られた

犬の破片を蹴散らしながら

猫橇走る

自分の匂いの汗で濡らした

法律用語に守られながら

曲がり角だけにゃあとなく

その声は君