penteka!
シヴァ（ウブドゥにて）
木村 靖
通りに花を散らす、なんて素敵なこと。
又聞きした幻聴は、誰かの名前宛てにささやいて、
僕は熱帯の熱に晒す、外っかわもちろん出来る限りの内がわも。
誰だった、あの夕方、理由があった？ 僕にわざと聞こえるように、
あっちのほうの騒々しさを、こっちの僕に少しだけ聞かせた。
ここには秘密がいっぱいある、とマデは囁く。
ねえ、ふざけるのはやめてくれよ、口だけぱくぱく動かすのは。
花の匂いのせいかな、素敵だな、何かにウナサレてるって。ウナガサレてるって、
震えながら淀む内がわさらして、あっちの方へ。手の鳴る方へ、
ほんと、マデ、まって、友達なら、君の好きな「トモダチ」ってニホンゴなら、
ちょっと僕を支えてくれ、揺れ沈む僕を、遠く見下ろしたままで、
プルメリアの木陰で、気を、いや、あの花弁なめらか。可憐でスレンダー、
王宮広場の舞台の上で、秘密を分け合っている十本の指の、その重なり合い方で、
離れていくその捩れかたで、外っかわ震え淀み、青銅を叩く音の連なりと、
なんて色なんだ、ダンサーの少女、褐色、肌、白色鉛筆を突きたててナゾる謎、
プルメリア。
通りに花散らして、花蹴散らして、ウナガサレてるって、あの瞳の向こう、
又聞きした幻聴の世界より、たゆとうぞ、たゆとうぞ、と。
ここでは名前さえ、意味をなさないんだろ。
マデ（二男）。