投稿作品




淋代くんだり
木村 靖





スローな6/8で淋代の夏は霧の中
終わりのない形で飛ぶ鳥
基地のフェンスで引き返し
海に逃れた
   
コロイドの中を行くトヨタ
なんとなくとどうしようもなくの間で
トルクを溜め込む方式
直線は所詮円なので
(絶対空間の話ではない)
あの鳥と同じくらい
     
僕はほおばる
昨夜の宿のフサコ婆に
握って貰った塩味しかしないおにぎり
     
やがて妄想列車は波を蹴散らし
まずもって聞き取れやしない方言の喧騒と
それは長い年月に鍛えられた無意味だ
かなわぬと知っていて果てへと向かう
ボックスシートに押し込めた
空(から)の籐の買い物篭だ
    
彼女達に
それはからだと言ってはいけない
    
淋代の浜に降り立ち長袖を着る8月の霧の中
コロイドの中にトヨタは置き去り
盆踊りのやぐらを見上げる
見上げた向こうに黒雲












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