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年老いた妻へ 杉本邦文 逝ってしまった君を見て、 若かりし頃の言葉が甦る。 遺体は月の裏側に埋葬しよう、 いつまでも消えない幼心を、 誰にも傷つけられない場所に置いてやるんだと、 前しか見ない眼の持ち主達は、 そんな事を話しました。 歳月は積み重なって君の命を攫っていった。 皺だらけの掌をかざし、君のいる世界を見ています。 再会を果たすその時は、昔の歌が聴こえるでしょう。 月光が、私の家族を照らしている。 杉本邦文profile 今月の作者紹介 TOP PAGE
年老いた妻へ 杉本邦文 逝ってしまった君を見て、 若かりし頃の言葉が甦る。 遺体は月の裏側に埋葬しよう、 いつまでも消えない幼心を、 誰にも傷つけられない場所に置いてやるんだと、 前しか見ない眼の持ち主達は、 そんな事を話しました。 歳月は積み重なって君の命を攫っていった。 皺だらけの掌をかざし、君のいる世界を見ています。 再会を果たすその時は、昔の歌が聴こえるでしょう。 月光が、私の家族を照らしている。