クリーニングをとりにいく
樋口えみこ




もう、新宿も渋谷も行かない
飲んでセツナ的になったり
しないんだ
思わせぶりなコトも言わない
腕も組まないオッパイくっつけたり
しない
ネない
サミシがらない
キドらない
夜中に電話もかけないン
名前も書かない
手紙も書かない
ハロー、猫にだって話しかけない
クリーニング
それはとりにいく
    
(本日は晴天なり)
変なホテル、
コンビニカフェで爪を切る
隣の君がライターを落とした
やりきれない夜昼夜昼夜昼の繰り返しと
きれいなお墓
それはそれはきれいでした
(お手紙ありがとう)
      
私はタイトスカートはいて
恥ずかしいかっこうをして
そうしてタクシーの窓を過ぎる
高速道路のライトの列は
夜昼夜昼の繰り返し
そのころ、君は
コンビニカフェで詩を書いて
そのころ、私はとてもきれいでした
青カビみたいに
お腹いっぱい食べました
       
♪ランチ、サラダ、コーヒー付き
まだ生きているようですね
私も生きています
まだまだこれからという気もするし
とてもしあわせな人生でしたと点を打ちたい
気もします
それはしかしないでしょう
クリーニング屋のおばさんにはニッコリ
あいさつをします
それは知らない人だから
    
ねえ聞こえる?
でも聞こえなくていい
あんたも年をとりましたね
頭のいい詩になりました
ホーイ
どこにいるの
いつでもわからないところにいて
風の吹いてるところ
なんにも意味のないところ
お金がキャンディみたいにきれいなところ
価値がなく
大きな世界で小さな部屋で
カメレオンに背中をつっ突かれて
結婚式で日が暮れて
窓からペリカン顔を出し
ワーホホホーイ
孤独なところ
きれいなところ
ノミとシラミのわくところ
パンとワインのあるところ
コーヒーカップのあるところ
愛とか恋のないところ
コーヒーカップのあるところ
汚いお尻のあるところ
あなたがとり出した四角い小箱のふたをあけると
あなたの心臓が波打っていました
ピンクだった
    
あの箱をそれからどうしたんでしたっけね
オー、ララ
私は犬を見てから帰ろうっと
もうすぐ死ぬ
元気な犬
毛むくじゃらの犬
踏みつけてやりたいほど目のきれいな犬なんです











詩集「なにか理由がなければ立っていられないのはなぜなんだろう」より

樋口えみこprofile
今月の作者紹介
TOP PAGE