| 夏のこどもは |
| 噴水広場をさ迷う 尻尾の無いエンゼル。 |
| 紙オムツの尻が |
| みつばちのように ブンブン唸っている。 |
| あ |
| という一声の前に既に |
| 公衆の面前で |
| 駅前の噴水広場 |
| ぺたぺたと足型のスタンプを |
| 水の上に押している。 |
| スグキエル |
| スグキエル |
| 母親は呆気にとられて |
| 座り込んで ためいきひとつ |
| それにしても青い空の午後だ。 |
|
| 夏のこどもは |
| 水を従えて |
| バケツもスコップも要らない。 |
| 指を潜る珠数だまの水滴に |
| 未知数の言語を投げかける。 |
| 其れが |
| はしゃいでいるかどうか |
| おとなたちは聞き耳も立てない |
| 感動を覚える |
| 水を知ったヘレンケラーのように |
| 感動を覚える |
| 夏のこどもは |
| じぶんの触覚で |
| 小さな味覚で |
| 水を感じている。 |
| 水を愛している。 |
|
| 鳩がこどもの頭上を |
| 瞬くように 飛び立つ。 |
| 濡れたTシャツを母親が脱がせると |
| ぶよぶよの |
| けがれ無いエンゼルのからだが |
| ぴかぴかに光っている。 |
| そのビニール人形みたいな魅力の上を |
| 水飛沫が颯爽ところがってゆく。 |
| 夏のこどもは |
| 汗を拭く雑踏の一角で |
| 夏の歌を |
| みんなにうたわせる。 |
| 太陽の高さも ビルの |
| アルミホイルのような色も |
| 夏のこどもが忘れさせる |
| おとなたちも思っている |
|
| ハダカニナッテシマイタイ |
|
| ハダカニナッテシマイタイ |
毬藻 profile
今月の作者紹介
TOP PAGE