penteka guest
特類認定のテーマ…上村浩史
ビルとビルのあいだでカニがサル渡りをしていた
あらチンチンあらチンチン 赤い傘をクルクル回しトンツクテン
見上げる青空は深く
カニのサル渡りするロープは一筋の光をきらりと引いた
カニはハサミでぶら下がって喚いていた
行き詰まりの上に鼻詰まり
ワシの心も涙で曇る
クソおんどりゃ ええ加減にさらせ お前らいてもたる
間抜けらがいびつな口で喚きよる 恐いくせに
影法師が笑う 世のケツのひり出した ウンコも笑う
ウンコが出てきたケツの穴を笑うぞ
笑われて ケツの穴も 苦笑い そこのウンコよ だれぞのおかげで世に出たか？
ウンコさんと肛門さん
あんたらよりもっともっと下々の者どもが この世にはばかれば
それはウンコ歩きの無限の列が
血まみれの海に落ちていく
これはカニごときがのたまうことではない
だれも言わんから このカニごときがサル渡りしながら言うてるのだ
甲殻類ぶら下がりの真昼 だれも知らない真昼の出来事
甲殻類カニはブラブラ揺れてひょいと落ち
固い地面に砕け散り
さらに厚底ブーツに踏みつけられて
スナックの男の散水にドブへと流れて行った
でもロープにハサミだけ残っていた
揺れながら自力で空へ昇っていった
こんなものが真昼から見えている私はヘンだろう
たぶん自分はヘンだろう
カニのハサミだけ上空へ昇って行った
お前何しとんじゃと通りすがりのナマズ顔のオッサンがじろじろ睨む
私は胸倉をつかんで往復ビンタを食らわしたが
ぬるりとナマズは逃げてドブへ消えた
残されたリアカーの中に白い犬がいた
可愛いなどと指を差しているそこの女二人よ
ナマズがリアカー引いて犬を飼う世の中が平気か？
我々人間はこんな化かしにあっても何もないような顔で毎日を過し
いつのまにやらこんな分際にバカにされるのだ
人間の上空でカラスがアホーと鳴いているのにどうしてカラスを撲滅しないのか？
ひどい侮辱が飛んでるというのに
私が近づくと犬は短い足で立ちあがり睨んできた けっ犬のごときが
バカめ お前みたいなクズがでかいツラぶら下げて 犬はそう言った
バカ？ バカとはなんだ 犬が人間に言うことか？
お前ら意味もなくびょうびょう吠えてるだけだろうが
一足す一は？ びょうびょう
三引く一は？ びょうびょう
四割るニは？ びょうびょう
ルート２は？ びょっびょびょうびょうびょうびょうびょっびょびょびょびょ・・・
吠えるだけで人様の食い物までもらえるなんてどういう了見なんだか
じゃぁ聞くが、横木玉男は佐藤喜美子と不知火富士子を４名で犯し、朝岡鏡子だけは連れ帰って四つん這いで犬歩きさせた
横木玉男は鏡子の前に立ちはだかりチンポをしゃぶらせた
鏡子は何と吠えたかな？
ほらわからんだろう バカめ お前ら腐り野郎
びょうびょう
あほんだら チンポくわえた女が鳴けるか どあほ
びょうびょう びょうびょう お前はクズだから犬にしか威張れぬさ
まるで人間であることが勿体無い
哀れとはこのことよ お前の姿なんぞ死んだことも理解出来ず砂漠を歩く骸骨ぞ
風も砂も肋骨の間を吹き渡り もう腹が減ることもなく腹がくちくなることもない
節穴の目に何が見える そうよ 虚ろな影しか目に見えまい
私はアイスクリームを舐めながら歩いていた女を蹴り倒し そのサンダルをもぎ取って犬をひっつかんで殴りつけた 脳天ぐしゃぐしゃになるまで えらく切れ味のいいサンダルだった
見ろ 自分を 血まみれの赤い犬め 私は無礼で浅はかだったかつての犬を目の前にぶら下げ ちょうどダンプカーが動き出すところだったので ぐしゃぐしゃのかつての犬をタイヤの通るところに置いた
かつて犬だった肉の塊はダンプのタイヤに貼りついて去っていった
呪わば呪え バカ犬 くやしかったら化けて出ろ
肉がタイヤの溝にまで食い込んでいた 屈辱のドライブをどうぞ
もういったい何が何だか バカの犬の亡霊も理解出来ないだろう
これから先まるで形が無くなるだろう 屈辱のドライブをどうぞ
バカの犬が勿体つけてほざく口など 干物になった魚も笑うよ
食えないってさ あはは
屈辱のドライブをどうぞ
ダンプが行った後 地面の一部が盛り上がり牛が現われた
ノロノロ歩いて私の目の前に鼻面を寄せた
どうしてこう間抜けばかりがやってくる？
牛は出なくてもいいだろう 牛は牧場だろう 野を歩け 野を
牛の肉は旨いことが分った と土を払い落としながら牛は言った
だから肉屋で買物をするのが日課だ 分るか
今日は焼肉 明日はステーキ んでもって牛刺し
牛に限るね 牛が旨いので たまらん
でも 最近 パブとか行ったりするし お姉ちゃんのおいしい太腿をれろれろ舐めるとたまらん
ワシの涎で姉ちゃんもヒーヒーよがってさ ワシも喚いたりして それで暴れたら 店の壁に穴が開いてね
もう散々であった 屠殺するぞてめぇ なんて店長に追いかけられて 仕方ないから体当たりしたら土手を転げ落ちて川
にぼっちゃん
次の日ケーサツが川を浚って 背骨の折れ曲がった死体を引き上げていたっけ
で、この通り、まだ捕まらないってわけ
鍛錬してたさ 動きが速くなり反射的に路地にも駆けこめる敏捷牛さ
逃げ足も変装も完璧さ
どうだ このワシが牛に見えるか？ ちょっとした経営コンサルタントってとこだろう？
あはーん、お前には分らない？ お前みたいなクズにゃコンサルタントって理解不能だろう
じゃツアーコンダクターって分る？ ライフプランナーはどう？ とーたるらいふあどばいざって知ってる？
私は包丁さばきを練習しながら歩いていた若い調理人を殴り倒し その包丁を奪って理解不能な牛をめった刺しにした ノロノロ逃げながら理解不能牛は鳴いていた
お前が牛以外に見えるわけがなかろう どうしたらここまで勘違い出来るか不思議だ 牛は牛だ
肉屋でぶら下がり金網で焼かれカレー鍋の中で煮立っていればよかろうが
分らないかなぁ？ バカはバカだって どうあっても牛はのろいだろうが バーカ
倒れた理解不能バカ牛にまたがって包丁が折れるまで刺しつづけた
頭上に人の気配があり 人の気配が階段を下りてきた
そこで牛を殺してどういうつもり？ さっきから見てりゃ動物ごときにいい気になってさ 気配が言った
見回せどだれもいない 気配と香水の匂いだけがうろついていた
あんたこないだもここらへんでアヒルの首絞めてたね いい加減にしない？
あんたアヒルに何か説教してなかった？ 北方領土がどうとかさ で、何言われたの？
見せかけ右翼 なりきり右翼 クズがほざいてろ とアヒルに言われた
その前の週に子豚の手足をちょん切ってサッカーしてたよね
ブヒブヒうるさいっつーの あとで親豚が探してたのよ あたしの家まで来て 何か見なかったかって
可哀想だから何も言わないでおいたよ
明日は私たち屠殺なので、せめて息子に一目会いたいって
よっぽどあんたの行った方追いかけようかと思ったよ
でもあの先のドブ川に最後蹴りこんでたよね
黒い背広のサングラスの男が二人強引に部屋に入ってきて親豚を連れていった
超国家機密部隊略してチョーコッキ
「チョーコッキだ。豚に構うな。構うとひどいぞ」
親豚は大人しくしてたよ ブヒって母豚が泣いてた
どういうわけか、チョーコッキがお金置いてったよ でもヒモが帰ってきて取られちゃったけどね
「チョーコッキ？ なんじゃそりゃ お前バカ？ 店出ろよ 風邪治ったろ？」
あのヒモにもいい加減ブチ切れてたから 店のお客に言ってパチンコ屋出てきたところをとっつかまえて山の中へ連れて
ったわけ
あの男殴られながらひぃひぃわめいてさ 腹蹴られてから物言わなくなったけど
意気地なしのくせして当然みたいに威張ってるだけだったから半殺しにしたいって思ってた
ヒモは口から血を垂らしながら幽霊みたいに両手を前にブラブラさせて山を下りてきて ふもとの村の田んぼに落っこち
て窒息死だよ
いいかい それでまたこのヒモの男の両親つーのが来たんだよ
「カズオのお友達と聞きまして」なんてさ中華料理屋の親父がかしこまって疑ぐりの目で見るんだよ
「カズちゃんはオヨヨ・・・」ねぇ母親はオヨヨって泣いたぜ 笑えるっつーの
「さぁ最近見なかったしー、どーしてんのかなーって思ってたら山で遭難だって聞いて・・・」とか適当に答えたよ
「山に登るような子じゃなかったんですがオヨヨ・・・」
そりゃそうだよ あのバカが自分で山に登るくらいならあたしは自衛隊に入ってるね
「どうして山なんかに登ったんでしょうカズちゃんオヨヨ・・・」
「ま、そこに山があるからって言う人もいたって先生が言ってたよね。魅力あんでしょうね、山って、意外に」
「ちなみにどこの先生ですか それ？」親父いきなり話がそれたんだよ ヘンな親父 でも疑いの目が消えてたし 私も
答えたりした
「戸部第二小学校の６年２組の揚子江が好きだった岩金先生」
「ほぉう・・・ そうですか。実は私も中華料理を始めたきっかけが揚子江でして。あの悠久雄大な流れこそ底知れぬ文
化と歴史を湛えておると、四畳一間のアパートで眠れぬ夜に思ったわけでして」
「あの頃はお父さんも若くて。私なんかどういうわけか貧乏だったけどこの人のそんなところが」
「おいお前、こちらさんにそんな話をしなくても・・・」
「そうね。そうでしたわねオヨヨ」
結局終電近くまでいたっけかな ま、ちょっとあのヒモが可哀想になったけどさ
バカにも親がいるってことねー バカみたい バカを産んで育ててたなんて
おまんこしたら精子と卵子が出会ってバカが出来たってわけ これって悲しくない？
こうして気配の女は姿を現わし、それは虹色に光り輝く美人だった
ミニスカートの下に息づく太腿がまぶしくて目も開けられなかった
女は手際よく牛の死体を片付けるとさっさと階段を上がっていった
どうか神よ この美人を見ていたいので目だけはつぶさないで下さい
私はさっそく目の神社に行ってお札をもらい 目に効く饅頭を食べつづけた
そうしてぐんぐん目は強くなっていった 眼力たるやすごいものであった
目がカッと熱くなると 目から光線
一人暮しの女の家のドアノブを吹き飛ばし 超微弱光線でじわじわ震える女の服を脱がせていった
知り合いに連れられて工事現場で溶接してみた おおうと親方も唸った
アスファルトを溶かして字が書けた「怒羅餌門参上」
殺虫剤がいらなくなり 蝿もゴキブリも一瞬で崩壊した
木の高いところになった柿を落とし
溜め池の水も干上がった
近所のエロ本屋の親父がいつのまにやら役所に通報していた
ある日役人が来て色々説明していった
目から光線年金ももらえるらしいがどうやら届出が必要らしい
東京目光線研究所で私は特類の認定を受けた
まぁあまりカッカして他人を睨まないようにと眼鏡をかけた白衣のおっさんに言われた
おっさんは目から光線学名誉教授だった
かつてはザルツブルグ大学で目から落ちるウロコの研究をしていたそうだ
廊下で男が泣いていた 職員が慰めていた 乙類審査に落ちたのだろう
レンジャー部隊で訓練中に大怪我をし 眼力も落ちたらしい
丙類審査を受けるよう勧められていた
丙類じゃぁヤクザが凄むのにちょっと毛が生えた程度 一応の光線は認められる段階
帰り道 どうやら私はニヤニヤ笑っていた
訳の分らぬ犬や牛のごときに散々謂れなき中傷誹謗を受けつづけて傷ついた私の心はようやく立ち直りつつあったのかもしれなかった
嬉しくて歌も出来た 「特類認定のテーマ」
ララララ〜
朝は来た 闇は去った
これでもうバカは抹殺
ひと睨みでバカは抹殺
気に入らなければ抹殺
空を飛んだらバカな町も間抜けな村も目から光線でズタズタにしてやるさ
皆殺しだって嘘じゃない
ルールルー ルンルルルンルン
耳から槍も出ないかな
こうして私は気配だった女と一緒になったのだ 気に入らなかったら殺すと時々私を脅すのだが ふふふバカめ この目から発する光線の前に この女の強気など屁でもなかった だから私は女に優しく出来るのだし この女も私を愛している 美人妻はいいものだ 女の下腹のなだらかな稜線に獣の匂いが走る 陰毛よ おまんこよ 芳しいケツの穴の匂いよ 舐めて狂って夜が明けて まだ女が寝ているとき 私はフライパンに卵を割って 静かに目の光線で目玉焼きを焼いている
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