penteka guest
| GWに格闘イヴェント３連戦を見て 自分も神の子になったつもりで作った詩 |
| 平居 謙 |
| 山本KID が神の子ならば |
| あたしゃ一体何の子ざんしょねー |
| と、そのヒゲ面の男はにやりにやりとしながら |
| お好み焼きのコゲ残りをターナーでそぎ取った。 |
| そして極めつけ丁寧に両端の長方形の深淵に追い落として |
| たわしでひと広以上もある鉄板を洗いはじめる。 |
| あたしなんか、さしずめコイツでさあな、といいかけて |
| あ、こいつは亀の子たわし三兄弟ってやつですね |
| と、イントネーションだけ東北弁でへらへらと笑うた。 |
| ああ、あのコらほんま、凄い迫力やね |
| と僕が相槌を打つと |
| 確かに凄いわでもあたしなんかこの辺でよく見かけるから |
| 珍しくも何ともないざんすし、むしろべたべたのやくざみたいな |
| 大阪弁がいやあよ、 |
| と言う。 |
| 「そこのお好み焼き屋のおやじは、『真空飛膝蹴』で有名な沢村忠」 |
| という友人のコトバを真に受けてわざわざ店を探してきたけれど |
| どうもガセネタ |
| 沢村に十字架（クロス）の入墨なんてないやろ、友人に小声で文句を言うと |
| 「アトデ」とマヨネーズで皿の上に書きよる。 |
| アトデ詳シク言ウタルカラ、なのか、アトデ彫ッタニ違イナイ |
| なのか分からない。 |
| こちらの話が耳に入ったのか |
| 「兄ちゃんら、悪いけど、もう店閉めるざんすよ」とおやじが言う。 |
| おアイソをしようとすると、カウンターの向こうからおやじの左膝がすうーっと伸びて |
| からくり人形みたいにカウンター飛び超えレジーの前に立つ。 |
| 秘密はコレざんすう、とカウンターの向こうにある |
| 「軽くひとっとびでカウンターを飛び超えられる道具」っぽいものをおやじは指差した。 |
| おやじは指さしたが、青ざめた僕らは、じょぼじょぼじょぼと飲んだばかりのビールでパンツの中をずぶぬれにした。 |
| 店の外に出ると、お好み「さわむら」の看板の横に、 |
| 「人はパンのみに生くるにあらず」 |
| と誰かが名前ぺんで書いた落書きが |
| 消えないままに残されていた。 |
| 終 |