おみやげ

樋口えみこ

私のすきなひとのいいところをどうやって伝えよう

こんなに私がすきなんだからきっとすごくいいところがあるはずだ

ほかのひととすごくちがうところが

うまくいえない

こんなに受けとめているのに悪口ばかり浮かんでくるのは

私だけがそれを言っていいからだ

やさしくないはやさしい

まじめじゃないはまじめ

差別するは差別しない？

すきなひとがだれかをほんとうにおとしめたのを見たことはない

えらくないはえらい

じぶんをかざることはだれでもできる

すきなひとが口にする乱暴な言葉は真実にひかっている

もっといいところがあるはずなのに

うまくいえない欠点ばかりが飛び出てしまう

欠点ばかりを受話器に向かって連ねる私がかなしくなって泣いてしまう

すきなひとはいつものように不機嫌そうに

「誕生日はこれだけだから」と 揚げ饅頭の菓子折りをおしつける

なんで饅頭？誕生日はまだ先だ　「いらないんならもうあげない」

やさしくないはやさしい

こわいはこわくない

すきなひととは私は仲直りができる こどもみたいに

「泣いてるからさ」

だれよりもこわくなく

だれよりもこまかくちぎれたつばさですきなひとは荒々しく私を

つつみこんでいる