樋口えみこ
時間がかかってわずらわしいカラーリングもパーマも
オヌマさんのところへ来てからはじめた
ふらりと訪ねた2003年11月28日からきょうで13回目と
会員証に記録された
28歳ぐらい 赤い色の微妙なバランスのレイヤーショート
渋谷のパルコを徘徊するのが好きでたいていそこで買った
大ぶりのアクセサリーをぶらさげて媚びない女らしい服装
オヌマさんが不機嫌そうだったことはいちどもなく
流れにまかせてオヌマさんについての話をいろいろ聞いた
オヌマさんのお兄さんは子どものころ
池に浮かぶオオオニバスという蓮の葉にたまった水を
「勇気の水」と信じて飲みエネルギーチャージしていた
オヌマさんも「勇気の水」を飲んで
どれだけ高い所から跳べるかを子ども同士競い合っていた
男の兄弟に挟まれてたくましく育った彼女の趣味は乗馬
帰省して地元の乗馬クラブへ通う ある日お母さんを誘おうと
連れだしたが車の中で待つと言い張られた話
戻ると車内でカラオケを熱唱していた母
「ヒグチさん、野菜はすきですか」
は？ なんでもたべますよ。
「茄子の素揚げが最近お気に入りなんです」
そ、そう。 衣つけないであげるの？
「そうです。素揚げしてにんにくとしょうがのすりおろしで
食べるとすごくおいしいですよ。おすすめです」
それはおいしいでしょう。でも油もの滅多に家でしないから。
「私も家でしません！帰省したときに作ってもらいます」
はぁ、、、あの、切ってから揚げるの？
「ヒグチさんー（ナニ言ってるんですかと呆れた顔で）
トントンって薄く切りますよー（笑っている）」
わたしが呆れられなければいけない流れでしょうか？定かで
はないがオヌマさんと話していると気持ちがやすまる
まわりの美容師さんやお客さんの姿が風景画のように流れる
そしてロングは手入れが面倒くさいとかオヌマさんにおまかせ
好きにやってと言い放ち「その場限りの女と長くつきあいたい
と思わせる女」を熟読して呆れられながら３時間がたっていき
鏡のなかのわたしはきれいになっていく
にっこり
鏡の中のオヌマさんもまんざらでない顔をする
わたしは内心気になっていることがらを軽く言ってみる
オヌマさん、あたし、職場がかわるの。ちょっとやすむ。
「そうですかー
ヒグチさんならどこでもやっていけそうですよね」
オヌマさん、あたし、今夜、隣の来客にお風呂の沸かし方
教えないといけないんだ。外人なのー。どうしよう。
「だいじょうぶですよー
ヒグチさんなら外人の子と意気投合して友達になっちゃう
かも。」
そんなことない外人恐怖症の私なんだけどおまけにほんとは
つきあいベタで人との距離のとり方がよくわからない。でも
肩がすっと軽くなる
さっきマッサージしてもらったのも効いてるかな
「左がすごく凝ってますね」ぐい
あいたた。あたりまえのこと、書いていいですか？
いち、わたしはやさしくされてうれしい。
に、オヌマさんの笑顔が曇っていたことがないのがうれしい。
さん、オヌマさんはプロフェッショナルです。
し、仕事がすきなのだと感じます。
ご、わたしは、まだまだだな。
まいかいそう感じられる
ありがとう 自然にわたし 言ってしまう
戸口で送ってくれるオヌマさんは
いつでもにっこり笑って、ちょっとほこらしげです
勇者ライディーンみたいだね（ふるい）と言って
困った顔で笑わせたいけれどそれは次回にしておきます
|