投稿作品
◆パンゲアから墜落したオウムのワケ 鎮戎 うっそうと茂る山道を登りきると急 に階段が現れ よじ登り トレッキングシューズの紐は切れ アナログ時計は時を刻まない すでに 日は暮れようとしていた 空は空の上に 戻るために 黄金色の手すり 膝をかけ腰を据えると 見切り発車の電車に首輪をかける車掌がみえた 気がした 人差し指を口にくわえる ぬれたゆびさき ぬれたゆびさきを 空に向ける 大陸がまだひとつだった頃の名残はもう 人の心に残っては居ない 気密性の高いジャングルでは 動物の匂いまで腐っている 黄金色の手すりにつかまり 渋谷の方向に向けて立ち上がる バランスを取り 両手を羽のように 人類初の鳥人の振りをすると 脳裏に浮かぶ言葉は文明に犯されていた タイタニック タイタニック タイタニック ジントニック 最後の言葉をとくに強く吐き出し 鳥人の振りをする３２歳は 充分に鳥人の資格を得ていた 夜目が効かない ジントニック ミシェルガンエレファント モンサンミシェル オジーオズボーン タイユバンロブション 君のクレジットカードの期限も切れている もう望みはない 望みは何だ 望みを言え 完全に目が見えなくなる前に 飛び立たせてくれ！ 屋上に続く階段に人影がひとり カゲヤマサン 経理ノオバサン 何してるのなんて 黄金色の手すりに繋がれたオウムのように羽ばたいてみる キマッテンダロ タバコスッテンダヨ！ オクジョウイガイ キンエンキンエン！ パンゲアの屋上に住んでいるオウムは煙を吐く ほそく そして ながく |