6月のピカイチ


 「ある。」        高岡力



 それは 熊だろう
 いや 犬よ
 と 妻と問答していたら
 それは 泥になった
 嫌な夢だった
 な と 手足をのばし
 朝のなかに顔を入れる
 泥の感触がまだ残っていて
 陽のなかに手を透かす
 からからに渇いたモノが こびり着いていて
 気を指に入れたら 崩れた
 何処までが泥なのか わたくしの手までもが ない
 心配はないようだが 念の為に縛ってみたが
 何処までが泥なのか わたくしの腕までもが もげた
 心配はないようだが 止血 止血 と 肩を縛ると
 肩だけが 残った
 肩以外は泥だったようで 床にわたくしは 散っている
 これは 何だろう
 と 子が持ち上げる
 それは わたくしの右肩なのであるが ジューシィー
 と 言う事で 犬に くれ られ た
 掃き集められた わたくしは また
 水に溶かされて 形を与えられるのであろう
 型に押されて 巧みに色を与えられる
 あー まるで 生きてるみたい
 と 田中さんが 感嘆
 するのは そう 遠い 
 将来 では ない
 と わたくしは
 おもうので ある。





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