|
| さんさんと射す日に背を向け |
| 椅子に座る |
| 泣いても笑っても苦悶でも |
| 表情は逆光で 真っ白だ |
| だから 片目だけを 開けておく |
| 頭部は 剃ってしまったから |
| 掻き上げて整える感情はない |
| 裸だ |
| 手を垂らす |
| 痛んだ爪で陰部を探る |
| たゆたいのリズムで上下にしごく |
| 幾分表情は 変化していく |
| でも そんな変化はいらない |
| それでも 瞑りそうになる |
| 片目だけは こじ開ける |
| まだ シャッターは切らない |
| 瞬間が欲しいのだ |
| まだ激しい律動に達していない |
| 何を思って続けてゆくのか |
| 巡る |
| 淫辱の風景を 彷徨う |
| 追放にあった人の様に |
| 一人きり 神話とは違う 青いリンゴに歯を立てる |
| 蛇が腿に絡み付く |
| ちろちろと |
| 白い腹をむき出した 夢想地帯だ |
| 空で鳴っている 心臓 |
| 顔は知っている |
| 隣の女 |
| 三十半ばの子持ちの女だ |
| 空で鳴っている 心臓 |
| ちろちろと |
| しどけなく旗めく闇の裾 |
| 湿った草むらの匂いがする |
| おくさん！ |
| まずしい叫びが屋根を超える |
| 跳ねる蛙の醜さで |
| 旗めく闇に にじり寄る |
| もうシャッターを切りたい |
| 多分に 表情が変化して行く |
| つい目を 瞑りそうになる |
| だから右目を こじ開ける |
| Ｍ ６が 鳴る |
| 打ち返す 感触 |
| 瞬間 孤独な熱病が飛ぶ |
| 青いリンゴがポトリと落ち |
| 蛇が薮にかえって行く |
| 空で鳴っている 心臓 |
| 絞り込んでも真っ白い |
| ぼんやりとした |
| 逆光の |
| 午後 |
| 焼き付けられた |
| 歪んだ |
私
|