■斑鮪解体ショー　　　　鎮戍 　　雨が来たりて 　　僕の鼓動を打つ 　　水溜りを寝室につくり 　　写る未来の画を眺めて 　　日の昇るまで 　　日の暮れるまで 　　日がな一日 　　たまに水溜りに釣り糸を垂れて 　　たまに引っかかる 　　水色した水滴のカタチをした 　　きれいなサカナを仕入れては 　　密売をして生活しています 　　日がな一日 　　パイプから煙を流し 　　遠くを見つめながら手元に集中する 　　慣れればたいしたことはありません 　　パイプの先に 　　ちょんと羽を休める鴎が 　　しきりに首をかしげて 　　どこかをみている 　　僕が欲しいのは 　　君の風の便り 　　元気であれ 　　幸せであれ 　　笑顔を想像する 　　想う 　　君にとって大切なものが今そこにあれば 　　今どこにいて 　　何をしていますか 　　僕には 　　楽しいときにだけ返事をする後輩の男の子とか 　　役に立つときにだけ声を掛けてくれる仲間とか 　　役に立たないときにだけやんわりと非難する 　　しごくまっとうな人間関係があります 　　そびえたつ水槽の中 　　マグロが午後１時と６時にサンバを踊ります 　　解体ショーのはじまりはじまり 　　元アクロバットダンサーの綾子さんが 　　見事に解体 　　彼女は何だってできますそのしなやかさ 　　冷静さと 　　むじゃきなこころで 　　消えてしまえばあっけなく 　　それっきりになってしまえるというのは 　　ある意味ありがたい 　　自分がまるで色づく紅葉の落葉になったよう 　　美しく落葉し 　　翌年の養分になる 　　なりつづける 　　森の養分がサカナになるという 　　そういう生き方が性にあっています 　　僕には 　　ゴロワーズとボウモアがあって 　　仲買人のゴローちゃんが干からびた 　　海亀の燻製をくれる 　　ジョウヤクイハンダヨ 　　という言葉の意味がよくわからない 　　わからないわからない 　　クロマグロの大量の臓腑が溢れる未来を眺めている 　　この部屋では