10月のピカイチ
『 椅子 』 高岡 力
木の足が四本 木の床に立っている みしみしと音を立てているモノは 足で それでも神妙に前進している 木の家が揺れている まるで呼応するかの ように 木の窓枠がガラスを震わす 外では木が狂ったように怒りで身を震わせている 足は手を持っている 手は指を持っている 指は手に駆使されて 蓋を開けさせられている 足は首を持っている 首は頭を持っている 策略と企ての皺だらけが 指令している とも 足は 知らず に みしみしと音を立てている事に慚愧の念を足は 抱いて 策略と企ては 喜んで いる 皺だらけを左右に 揺らし 策略と企ては 喜んで いる 喜ぶ事を 弄ん で 手は腕に持たれている 腕は容器を傾けて 椅子に液体を振り掛ける 足は目を持っている 足は鼻を持っている 目は 揮発性刺激 に しばた いて 鼻は 揮発性刺激 に 縮こま って 赤い 赤い と 口が 言って いる 昨日までの大雨で 泥土になった地 を 足が 踏んで いる 持っている１０本の指で 噛み込む様に 垂直 に 立って 赤い 赤い 椅子 と 口が 言って いる 赤い 赤い 家 と 口が 言って いる 『ｈｏ ｎｏ ｏ ｏ ｏ ｏ ｏ・・・・・・』 と 皺が ほくそ笑んで いる もう内は ない 赤い 赤い 人 と 誰かに口が 言わせて いる