OKINAWA /JAL 911/GATE 14/TIME 09:45/SEAT43H （琉球ミスティ-改題） とうめいな声がする うすいＢｌｕｅの層が重なりあう すらりとして健康的な安産型のキャビンアテンダントが向かいの席に座っている 『海が、綺麗ですね。』 （何か云わないといけないからそういっているんだろう。 『お見合い席ですね。』 （収入のない男とお見合いなんてしないだろうできるもんならやってみろスチュワーデスさんと結婚したいなあとかいつも云ってたもんだだけどそれは地上での話で現実のお見合いが遠くなったおれはスチュワーデスさんとお見合い結婚を地上でこんな空の上の社交的な冗談などではなく結婚してくれよできるもんならそうやって空の上で笑顔を振りまくのなんてやめて俺と結婚してみろよスチュワーデスさん！とにかく空と海を目に焼き付けておきたいんだこれまで何度も夢にまで見たトロピカルな世界を肉眼でこんな高いところで見ることがこれから先なんかいあるかわからないんだ あおいそらとうみととしろいくもとさんごしょう うすいＢｌｕｅの層が重なりあう 音楽がきこえない 　　ここには音がない 音は息を潜めている エロールガーナーが、シカゴに降りたったその脚で飛び込んだホテルでミステイを書き上げたように ぼくは、地上のこの部屋でこの詩を書いているのだ。 とうめいな声がする ここには音楽がある ここには無数の言葉が共喰いと近親相姦を繰り返しては、 歪な日本語の水子が破裂しているのだ 空には届かない重力に逆らえない言葉が届かない 音楽は、ぼくの心を空に飛ばしてはくれるが　 瞼を閉じてもあの透明な空の色を声に置き換えることすらできずにいる アテンションプリーズ （もう人の言葉なんてわすれさせてくれこんな雲の上で。 アテンションプリーズ　 『海が、綺麗ですね。』　アテンション プリーズ 　　　　　　　　　　　　『お見合い席ですね。』 けどそれは地上での話で現実のお見合いが遠くなったおれはスチュワーデスさんとお見合い結婚を地上でこんな空の上の社交（もう人の言葉なんてわすれさせてくれ こんなこんなこんな雲の上で。 ドロップスの薄荷をばらまいた珊瑚礁　　　　と書いて虚しくなった。　 いつも余る あの白いスースーするハッカ！　　　アテンション 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　プリーズ！ うみが、綺麗　です　ね。