11月のピカイチ
共振 ／ 高岡 力
子が 浮いて いる 掬いあげて 干した あいにくの雨模様 だから 部屋 に もう すっかり妻 は かわいた ので のば した 糊が 効いて いて 幾分 四角く 感じ られる 畳む な きっちり と 差し出さ れた 俺の袖 が おまえの手口 に 裏返 され て いる 手口 その 先 に あす を 映し出す 執拗な 点検の爪が 光る 艶 消しの 闇 に 刺さった 赤い爪 誰の肉がこびり ついて いる のか
外 を みて いる 考え て いるの は もっと むこう あおい 隣の御主人 は 拾われ て しまっ た らしい いつか 俺も 拾われて みたい 落下するこの身をおもうと 身頃が 弾む おもいが する ひらひら 空洞を 揺らして いると 奈落が 楽園に おもえてきます と 隣の御主人は 言っていた ・・・奈落は やっぱり 奈落 でした・・・ と 昨日 御主人は 言っていた けど 明日の御主人は どう だろう 掻き立てる 渇望 だ なんて 風 に 紛れて 口にして また 惑わして くれるんだ ろう か ひろげられた肩幅 バネの弛んだ あかい ハサミ 細い金具で出来た首 で 危うく ぶらぶら ぶら 下がって いる 俺の 歪んだ 漂泊の 袖が 湿った妻の股間に 触れる そんな些細な 間違いが 晴天のあすには起る のだ ろうか たっぷりに 予報は 自信を 語る
雨音 を きく 聞き耳 ばかり が 立って いる あてる な もう これ 以上は のびやしない 俺の 細胞の 臭い を 蒸す な 入念仕上げの愛しい子 ようやく 息を 整えはじめた 俺達の子 よ 肩幅を 俺は 四つに 畳み 塞ぐように 押しつけた なく な 生乾きの 愛しき 子よ きみは まだ 幾分 肉の 匂いが して いる