penteka★★★

ゾンビのきもち　　　　　　　　　　　　野分 紅 　頬のまわりをびっしりと 　白いフリージアで囲まれて同じくらい白い 　わたしの顔がもう生き物ではない様子で 　冷たそうに眠っている 　という夢を見た 　起きてからもまだフリージアの匂いが 　する気がする 　死んでいた時から匂っていた匂い 　黒いつやつやした箱にしまわれている時は 　わたしは美しいプレゼントのようだった 　父が受け取りのサインを書いている間 　お出掛けに行く時のように期待する 　もう痛みもよろこびも感じません 　殴られても助けてと叫んだりしません 　キスするときにばかり吹きだしたりしません 　増え続けてきた利息が 　疲れを知らない夕方の子供のように 　わたしの体を覆う　 やすらかとは 　こういうことだ 　川岸を歩いていく　 夜明けには 　悲しんでいるひとにも 　よろこんでいるひとにも 　平等に安心をあげたい 　白いつるつるした陶器の洗面器の上の水玉みたいに　　 　ゆっくりと　乾くか 　そうでなければ次の水玉に押されて 　暖かな管に流されていく 　まだ　会ったことのないひとたちが 　そこに待っている

野分　紅profile

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