グレープフルーツジュースを飲め
| 景気は循環するとか |
| 歴史は繰り返すとか |
| たましいは輪廻するとか |
| あたかも何か一つの規則があるように人々は言うのが好きだが |
| 高い場所から落ちる時 |
| 人は自分が空を飛んでいるような錯覚をおこすものだろう |
| 物事には何かのきっかけがあるものだろう |
| もしそれがあるとするならば |
| スポンサーと共謀して |
| 健康情報を垂れ流し続けるあのテレビ番組だったのかもしれないとも |
| 今にして私は思う |
| クエン酸は肌にいいとか |
| リンゴ酸は体のどこかにいいとか |
| だが最終的に太陽の下には新しいものは何一つないのであり |
| あらゆる健康の源はいつのまにか |
| グレープフルーツとなってしまい |
| そしていつのまにかあらゆる存在の根拠は |
| グレープフルーツとなってしまった |
| 誰かが得をしたのか |
| 誰かが損をしたのか |
| 世界のいたる所にあふれるグレープフルーツの山々を見たら |
| その問いを発するエネルギーのある者はどこにもいないだろう |
| いつかきた道だろうか |
| やがて忘れ去られる日々だろうか |
だが一体誰を責めればいいのだろう？
| 祭りがはじまる |
| 街の大通りをグレープフルーツを積んだ何台ものトラックがやってきて |
| 道をグレープフルーツで埋めてしまう |
| そして人々がその黄色い山に群がり |
| お互いがお互いにグレープフルーツをぶつけあうのだ |
| 人々の目は真剣だ |
| あたかもそれが生きることそのものだと言うように |
| 一体人生において真面目に人からものをぶつけられ |
| 人にぶつける機会がどれほどあるというのか |
| 人々の手から放たれるグレープフルーツ |
| 頭で砕けて飛び散る果汁 |
| 正直私はこの瞬間が好きだ |
| 心底好きだ |
| 私も人々の中に分け入って |
| グレープフルーツを投げては投げつけられる |
| 歓声と怒号と悲鳴の中 |
| 私は空を見上げ |
| 雄叫びをあげる |
| 空は抜け切るような青空 |
| シャワーのように降り注ぐ果汁 |
| 太陽の光と青空の下 |
| 輝く果汁の滴はいつまでも網膜に焼き付く |
| そして私はグレープフルーツが飛び交う中 |
| 「太陽の下に新しいものはない」と連呼し |
| 「これが生だ」と叫び |
| 太陽を肉眼で直視するのだ |
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