投稿作品
ｆａｋｅ
夜の風と昼の雨の間で滲んで行く
気持が解れたガーゼのようである
今夜も昼間の熱気が抜けないから
氷枕で眠る事になるだろう
桃を剥くのが上手くなった
ヒンヤリとした桃を水に潜らせ
酷く切れるナイフを持つ
コワイ。
いつ皮を切り果肉に刃が入ったのか分らないのだ
キッチンは蒸し暑く
涼しい隣で待つ君を他所に
泣いてしまう
暑いから
どうして彼女と桃を食べられないの
誰も答えてはくれない
だって誰にも聞けない
誰に充てたか知れない
彼女の言葉
「本当はいつも君に会えればと思っている」
もしかして自分の事かと思ったり
そんなわけ無いと否定したり
屑みたいな希望を拾ったり潰したりするの
止められない
もう彼女の断片だけを見るのは厭
右手が震えて
泣いてしまう
彼女の為に剥けない桃
君の為に剥いた桃
もう温くなってしまって
両手は甘ったるいのに
生臭い匂いがして
血の匂いかも、と思う
冷えた空気と共に入ってきた君は
心配そうにする
問われても答えられず
「桃を台無しにしてしまった。ごめん」
そうしてまた
私は泣いてしまう
夏も冬も春も秋も
早く過ぎてしまえばいい