低い空

--猫と牛乳党といる人いない人

樋口えみこ

太った短い毛の猫が

屋根を蹴って

空を跳ぶ

しっぽを握って私

ちょっと

夢をみた

低い空

むかし好きだった猫が

ベランダから手をふった

どこまで行くの

低い空

網を構えて待っている

人間がいる

カメラかな、

キタヅメサン、夢中だから

ワクカワサンの窓、

心臓が鳴ってしまうよ

イクチャンはすごい形相で

意図をつむいでいる（ママ）

見えるの？

リットサンは目をつむり

毒入りの食べもので

眠れない、ジミイサン

ひとくちちょうだい、

トウシュは耳栓をポケットにしのばせて

サンダルを頭にのっけて

ラブレターを書いてるジョウジサン

呪文を唱えてみよ

パフがパフのままでテラニシさん

低い空に

リボンを結ぶ、タテノサン

写真を嫌ってニョロさんが

リンゴ、おサトウ、この世にミレン

ササキサンハ息をとめた

まま

エイサンの首がながくて

ヨーロッパ、この世にミレン

草の濡れる匂いがする、

フクシマさん

どこまで来たの

ヤマナカシがモノクロームの写真を

掲げてヤブニラミ

低い空に

3ひきうまれた

ユキヨクンのお腹からちいさい猫が

暗い廊下を光りながら転げていくのが

みえた、ミーネコ

タラネコ、キロリネコ、

ちょっとだけ

ちょっとだけ猫の背中で

息をはいて

とおりすぎた

苦手な９月に。リハビリ詩