投稿作品


結婚記念日
殿下





毎日
腕立てをして体力をつける
今は
彼女ひとりくらい
うえに乗せて
何回か上下できるレベルに
達することができているはずだ
でも
「夢」 は
重荷だ
新築一戸建ての広告

彼女を軽くさせる
というか
浮かれさせる
のに
広告一枚握った彼女を
うえに乗せただけで
ぼくの腕は
支えているのがやっとだ
「理想は大きければいい」
と 言うけど
そんな
「夢」 は
ビラの重さであり
吹けば飛ぶようなものだから
とりあえず
大法螺を吹いて
飛ばした

食卓で
人間を訓練する
しあわせは
攻撃的だから
銃を構えられ
姿勢を
とらされることになる
椅子に
座っていても
「白線」
が 引かれて
何度も
走らされる
きっと
「幸福は反復」

そのたびに 太くなる
それでも
ルールは守らされる
イメージが
先走ると
彼女の
おしゃべりで熱っぽい会話
のように
沸騰したヤカンの音が
フライングを知らせる
空砲に変換されて
幸福な
イメージが
恥ずかしそうに
スタートラインへ戻ってくる
とかく
しあわせは無駄な体力を使わせる
朝から散々な
「帰還」


でも
彼女とぼくは
こうやって
沸騰させたお湯をつかい
紅茶を入れて
「生活」 に
戻ってくる
「夢」 のない
しあわせは
「天国」 まで
飛んでいけそうな
軽さ
があって
憧れたりもしたけれど
結局のところ
それ は
程よい重さで
ふたりを
上下させるぐらいがいいのだ
ぼくは
消えられなかったので
今日も
同じ場所を
走り
汗をかき
腕をふるわせ
「幸福」を 太くしたら
彼女を
乗せたまま
後は
力仕事で
こなす







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