ジョルジュは口数が少ない。最小限にしか口を開かない。疲れているせいもあるのだろうが、それよりも節約しているのだ。ジョルジュは、言葉というものは、一度口に出したら、再生することはないと思っているようだ。　　　・・・・・・・
いやというほど口数の少ない死者たちの沈黙に直面してきたジョルジュは、おしゃべりと死のあいだに特殊な関連性を作りあげてしまったのだ。唇が最後の言葉で乾く瞬間をできるだけ遅らせるために、ほとんど口をきかず、しゃべる時には手短にし、いつも、言いたいことを心の中にためておこうとする。ジョルジュにとって、言いたいことがあるうちは、生きていられるという証拠なのだ。


−−「サン・ジャンの葬儀屋」(ジョエル・エグノフ 　松本百合子訳 　アーティストハウス発行)。無断転載。さびれた平穏な田舎町の墓堀人




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