penteka！
放射状の道
T.M（宮田直）
意味のない叫び声が響き渡る一室の中で
私は目覚めた
乱雑に放置されたベッドが
幾列にも並ぶ一室で
あらゆる者の負担と重荷が一瞬軽くなるという
あかつきの時刻に
「全ての旅行者の共通の悩みは
いつのまにか目的地がわからなくなることだ」
白衣を着た男は私にそう言って
室内の窓から外へ出ていった
私はベッドから起き
歯も磨かないまま
キーのさし込んだままになっている軽自動車に乗り込んだ
道は郊外へと放射状にのびていた
中心からのがれるようにして私は車を走らせたが
中心に何があるかについては知らなかった
道では警察がいくつも検問をやっていた
私は車を止めさせられる度にこう言った
「全ての旅行者の共通の悩みは
いつのまにか目的地がわからなくなることだ」
そう言うと警察官は何も言わずに
私を先に行かせた
放射状の道
直線という概念には終点はなく
中心からずっと果てしなくのびる路上からは
ことごとく何もない風景がどこまでも見えていた
それは無だろう
そして私は片手でハンドルを握りながら
自動走行システムのスイッチを手探りでさがした
ひきずりこむような睡魔のことを私は考えていた