投稿作品　　　　　　　　　

橋の上で
毬藻




いかだ舟が
プラムの色の川面をゆっくりとながれる。
どぶくさい匂いだったけれども
其処がわたしの生まれた町ならば　わたりどりになって
帰ってくる。
こころの重心をいつもここに置いて
いるのはどうしてだろう。
薄っぺらな夢は
隣人の筒抜けのいびきに掻き消され
しろい蚊帳の中で不眠症をこらえて
億万長者をつかまえて
下町を出てゆこうとともだちと
白墨で落書きした　炎天下。

ばちゃ、っと
太ったおばさんが打ち水をしている。
橋のむこうに
また
橋がしなやかな線を描いて
心が立体交差して
出てゆく日に　異国の海まで思い描いた
なんて誰にももう言えない。

・・ちゃん、
と呼ばれては、ふりかえれる
台所のように粗雑な
町。
べらんめえ調の言葉をかたるひとが
まだ何処かにいて、
狭い家並みの何処かで
ナイター観戦しながら野次を飛ばしている。

橋はいつの夜も
静まることの無い場所。

屈託の無い、騒々しい
夜はすこしだけ、
風がぬるま湯のように冷める場所。

・・・・・「台所のように粗雑な町。」風情ありそうな、その場所に興味を寄せますが、思い出話からもうひとつ、入り込んでいけると、読んでいて想像力をかきたてられ興奮すると思うのです。興奮したいンです。欲求不満なんでしょうか、わたし。「・・ちゃん」と呼ばれてからを書いて欲しかった、というご意見もありました。（ぺ）
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