penteka 投稿作品　　　　　

by ｆａｋｅ





丁度よく欠けた器が在りました

均等に光を跳ね返す表面を持った
廻りに
蠢く模様を描きだす
華奢な存在が気に入っていました

其れには剥いたライチの皮が良く映た
軽く乾いた果物の皮の
小さく波打った肌合いと
深い紅紫の内側が
真白な器の中で
鮮烈にひっそりとするのです

しかし、その器は先程
許可も無くもう一欠け欠けてしまった

許す事は出来ないので
それを捨てました
必要も無いのに
高い所から地面に叩き付けて

別に、それが落下する所が
スローモーションで見えたりはしません
予想通り儚気で印象的な音と共に
粉々に砕け散るだけです

砕け残った破片を
コレデモカコレデモカ
と踏みにじっても
痛みすら感じません

だって僕は靴を穿いているのですから

髪を振り乱して
汗でシャツが背中に張り付く





僕の骨もこんな風に砕け散るでしょうか
粉のように
箸で砕かれるのでしょう

無言無表情で淡々と
けれど一心不乱に
粉々にされるに違いない
粉々に、して欲しい

彼らは昨日も一生懸命
おじいさんの骨を砕いていました

昨日はそれを一緒に遠くから見ていた従兄さん
貴方は僕の骨を砕いてくれますか





水すら染込まないコンクリイトの地面には
砂のような破片一つ在りませんでした

雨も降って居ないのに
噎せ返る様な湿った匂いが在って
あの器は確かに消えていて


左手の親指の付け根に
鈍い痛みを覚えた
虫に刺され
熱をもって見事に腫れています
　

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