ドシャブリ 樋口えみこ
高田馬場の駅の改札で 人を待っていて 待ちどおしかった 若い女の友だちだったのだけれど
待っている人が 来るっていうのはいいものだな おもてはひどい土砂降りでも
待っている階段を一歩おりて すこしだけ改札から遠ざかり 手にした文庫本に目をおとして すこしだけまた遠ざかり 待っている時間をひきのばす あの人はかならず来るから 安心して たのしい時間をひきのばす
階段をもう一歩・・・ 時計の針が傾いて ほんのすこし不安がきざす だけど私はあのときの私じゃない 同じ場所、同じ時刻に立っていても 待っている人は きっと来る ナンテしあわせなことなんだ
急ぐ彼女の足もと、かわいいな
来ないものを一生懸命 待っていた日もあったけれど
いいな 雨空へバッと傘を突き出して 同じ道を ならんで繰り出していけるなんて