くるくるぱあでいいじゃない
長いこと自分は
賢くなりたいと思っていたから
ある時 学校に入ろうと考えた
周りよりひと回り遅れて
入学できた自分がうれしくて
一番前の席に座った
ところが
奥深い教室は
後ろから埋ってゆくのだ
みな海の底でお喋りしている
あたしは波打ち際に漂う
コドクな空缶
はじめはカラカラと音をたてていたが
そのうち塩水をためて無口になった
苦しくなって水から上がった
そこへ 風が
歌いながら歩いてきた
あたしは自由で気まぐれで
椅子になんか座らないのよ
狂って回る風ぐるまは
くるくると息をしている
くるくるぱあ
くるくるぱあで
いいじゃない
風ぐるま持って歩いた
前も後ろもない
草の上に立って歌った
くるくるぱあ
くるくるぱあ
くるくるぱあで
いいじゃない
別に
賢くなくたって
時とマネキン
窓のない街に立つと
ぼくは街に立つ窓になり
閉じられた窓枠の向こうから
行き交う人びとを見ていた
窓のない街に立つと
ぼくは街に立つ窓になり・・・
そんなフレーズではじまる
歌がくるのを待っていた
待たないでいても
いつか蝶番はゆるんで
両手をひらくと
風が入ってきた
窓の向こうのマネキンは
立っていた
待たないで
村野美優 profile/2000.9TOP/TOP PAGE/今月の作者紹介
