今月のピッカイチ！　　　

赤いリボン

吉野千里

少女は黒髪に結んで

両親のもとへかけていく

風になびいて

白黒の記憶にほんのり赤く灯る

この暖かさは少女だけのもの

そして　あの赤いリボンが

束ねはじめる

見せかけの包装紙をたどり　見えないお尻を持ち上げられ

静かに束ねはじめる

赤くなかったへその緒は

消毒された金属のハサミで切り離され

カラカラと箱の中で私を哀れんでいる

赤くなれるかもしれない糸を手繰り寄せて

夜な夜な銀の指輪の上に巻いている

指が壊死してしまわないかと疑いながら

赤いと言うこの壁に蛇が這う

ジャラジャラと音をたてて　登っては落ち登っては落ち

それでも赤くないと念じながら

何度も叩きつけられている

リボンは最後にチョウチョ結びをする

絶対にほどけない

いつかほどけてしまう

赤い蝶が羽を開いたり閉じたり　うらないをはじめた

コトンと置かれた机の上

静かに横たわる花束が

きつく香っている

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