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白鳥の唄が聴こえる

dormin

かじかむ掌を握りながら、
望遠レンズで覗いた
19歳のガードレールに叩きつけられたタンチョウヅル。

ソバージュヘアの医師の糊の利いた白衣に、
付着した焼きうどんのケチャップを、
電子顕微鏡で覗いたような気がして、

慌てて眼をつぶったら羽ばたいて、
グレーの緞帳の向こうに飛び去っていってしまった。

カーテンコールを待たずに湯気がたつ音の無い田園には
カルテすら残らない。

行って帰って、四キロで灰になる。
棒にならず絡まらず緩やかに曲がっていた。
１０キロ止まらずに走ったからそこに唄はなかった。
僕は、遂にぶつからなかった。

女衒、冬の空で大きく微笑む。
火鉢が凍るような雪割り酒を飲ませて、
僕は着物の裾を掴んでいたのを、ずっと知らずにいた

たぶん、透き通りたいんだ。
溶けて透き通りたいんだ。

ツルを白鳥と呼んで、
白鳥が謳った唄をヘッドフォンで聴いていたんだ。


まだ溶けずに、
一回転して息が見える頃には煙を吐きながら見ようとしている。


たぶん、わらっているよ。

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